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「玩辞楼十二曲の内「吉田屋」」

2011年1月15日

2011年01月07日08時58分47秒.pdf001.jpgのサムネール画像

                                        撮影 井川由香

松竹座夜の部の二番目狂言・玩辞楼十二曲の内「吉田屋」の"扇屋 夕霧"です。

この演目も先月の「河庄」と並んで我が鴈治郎家にとって最も大事な演目の一つです。

藤屋伊左衛門という役は、上方歌舞伎創始者"坂田藤十郎"の生涯の当り役であり、その流れを汲む曾祖父初代鴈治郎も生涯の当り役としたからです。
また、父が鴈治郎から坂田藤十郎を襲名した事によってより一層うちにとっては縁深い大事な狂言となりました。

上方和事の立役の中で最も難しい役がこの藤屋伊左衛門であると父も常々申しています。

私も二度勤めていますが、何と言っても存在の空気感が出せなくてはどうにも勤まらない役なんです。二度目に演じたときの千秋楽には何とかその入り口に入れた気が致しました。体の使い方、間の取り方台詞の言い回しどれをとっても高い技術が必要とされます。

一方、今回私が演じます夕霧は格が最も高い傾城でその位取りがまず大事となります。
そして、次に重要なのは伊左衛門との間に子供がいるという事です。
二人は実際には夫婦の繋がりがあり、その愛情表現がポイントとなります。
常磐津にのっての振りごとは言ってみれば痴話喧嘩ですので、二人の間の見えない愛情が根底に流れていなければいけないと思います。

舞踊のようで舞踊でない。しかし、義太夫と常磐津の音曲にのらなくてはいけません。
三味線との微妙な間が芝居に深みを増します。

父の伊左衛門は和事の体使いや台詞の音の高低、間の取り方が生きた教科書です。
私も手がけていますので、余計父の伊左衛門が理解できます。

上方歌舞伎には型があるようでないといいますが、「玩辞楼十二曲」に関しては、初代鴈治郎が上演した形が基本で、型のような事になっていますが、これが非常に大事になってきます。特に台詞の言い回しは曾祖父から祖父そして父へと受け継がれています。
久し振りに父の相手役をする事によってその台詞の言い回しを肌で感じ覚えていく事が藝の伝承の原点のような気が致します。

伊左衛門は紙衣という衣装を着ていますが、身分をやつしている現れです。
しかしその中から色気を放出するのですから並大抵の事ではありません。

松竹座は三階後方席を一幕見として販売しています。
「吉田屋」は¥1,200でご覧頂けますので是非上方歌舞伎の原点に触れてみて下さい。

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