中村扇雀の公式ブログ

2013年11月記事一覧

「12月京都顔見世興行へ向けて」

2013年11月20日

来月の「ぢいさんばあさん」の衣裳を衣装屋さんと相談して決めました。

いつものとおり見せ衣裳でこちらの希望を伝えます。
今回は着物の裏地"つけ"と呼んでいる部分の色を今迄やってきた方達と変えようと思っています。

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この写真の様に"ひわ"と言われる黄緑のようなものが皆さん付けていらっしゃるものです。
この部分が座った時等膝の間から見えます。
どうもきつい感じが僕のイメージする"るん"さんのイメージと重なりません。
またご主人の"伊織"さんの着付けと同系色で重なることも避けたいと思いました。
夫婦ですのでペアルックのように揃えるという考えもあるかもしれませんが、それも違うような気が致します。
そこで

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この写真のような柔らかい色に変えることに致しました。
また、37年たって"ばあさん"になってからの着付けを、最近皆さんが着ている"白茶"から初演に祖父の二代目鴈治郎が着ていた"銀鼠色"に戻すことに致しました。
そこで

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帯も自ずと変えなくてはいけないので、上の写真の中から一番下の帯を選びました。


16日にはご主人役の中車さんが楽屋を訪ねてくれて、稽古が3日間しか無いので、事前に色々と打ち合わせを致しました。
初共演の来月。今から楽しみです!

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「「沼津」の"お米"」

2013年11月20日

初役で臨んだ"お米"も残すところあと一週間となりました。

どの作品でもあたりまえのことですが、登場人物の心の変化を的確に表現することがこの素晴らしい作品を活かす何よりも大切なことででしょう。

偶然が重なりあって数時間の間に長年離れていた親子が対面してその実の子の前で父親が自害するという展開は、お客様を引っ張るには最高の設定です。
その間の心の動きを役の心で演じるわけですから集中力が重要だと今回つくづく感じています。

父の十兵衛は役の人物その人が目の前に居るかの如く存在しますから、否が応でもこちらも自分の演ずる役にどっぷり入っていきます。
毎日父の和事を感じていることが自分自身の財産になっていると感じる今月の舞台です。

舞台写真をいくつか掲載致します。

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撮影:二階堂 健

今月の26日迄連日国立劇場で上演していますので是非見にいらして下さい。

スケジュールのページからもチケット申し込みができます。

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「三津之助さんご冥福をお祈りします」

2013年11月20日

既報のとおり、大和屋一門の坂東三津之助さんが亡くなりました。
8月の歌舞伎座に元気な姿で舞台へ立っていたことを思うと信じられません。
年も私より2歳したということを考えると早過ぎるとしか言いようがありません。

立回りの立師としても後進の指導にあたり貴重な存在でした。

心よりご冥福をお祈り致します。

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「和事の芸」

2013年11月 8日

今月の「沼津」の十兵衛は鴈治郎家にとっては所縁の深い役どころで、和事のテクニックを駆使しなくてはならない役の1つです。

和事の役々の中では「吉田屋」の伊左衛門が最高峰に難しいとかつて父に言われた話は致しましたが、今回父の十兵衛を見ていて伊左衛門は勤めたことがあるので自分の経験として判るのですが、この役のほうがテクニックはより必要な気が致します。

台詞の言い回し(イントネーション)・強弱(ボリュウム)・世話と時代の使い分け・心の変化
等々ハードルは高い役です。
いづれ勤めたい役ですので父のセリフ回しや動きや呼吸をそっくり真似ようと意識しているのですが、この役に必要なテクニックは正直ハイレベルです。
いつか勤める時の為の今月は修行のようになっています。

世話と時代の使い分けと言うのは一例を上げて言うと、「千本松原」の場で十兵衛が死んでいく平作に股五郎の落ち行く先を告げるとき「吉田でおおたと人の噂」の部分で吉田でおおたとの部分が時代の台詞回しで人の噂で世話の台詞回しに変化していきます。これは、次の台詞の「親父どん」に繋がる事と、言ってはいけないことを言ってしまいもうこれ以上言えないという心の表現とが重なっている部分ですので、お客様にその苦しい心情を伝える為のテクニックです。時代はたっぷり、世話はさらっとというイメージでしょうか。

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「5日」

2013年11月 6日

今月も5日を向かえました。あたりまえのことですが。哲明(のりあき)さん(勘三郎さんの本名)亡くなって11ヶ月。

先日、本願寺でメモリアルイベントが行われましたが、中村座で一緒に過ごした僕や橋之助さん亀蔵さん彌十郎さんそして山左衞門さん勘之丞さん等は名古屋顔見世の千穐楽で参加できず残念でした。好江さんからはメールを頂いていましたが出席していなくても気持ちは「忘れません」の一言です。

その日にお兄さんも勤めた「西郷と豚姫」の"お玉"を勤めていたのも因縁です。

東京に戻り、巡業の「野崎村」の稽古を拝見に行きました。
巳之助さんが名古屋迄"久松"を私に習いに来てくれたので、国立劇場の稽古の後見に行きました。"久松"の役は辛抱する役ですが、人に教えると役の難しさが改めて判るものです。
どんな先人でも初めから名人はいません。回を重ねることで成長していくものです。
教えるのは得意ではありませんが、役の置かれている状況や周りとの人間関係、何故この台詞が口から出たかの理由をよく理解すること。周りの人の台詞で自分の話が出ていて第三者から見た自分がどうであるか知ること。ナチュラルにリアリティを持った言葉にするために場面以外の私生活でしゃべる時はどんな話し方をする人なのか。等と言うことを話したりします。
久松とお染は子供がいることが重要になってくるのでその神経を持つことを私は大事にしています。

哲明(のりあき)さんの話からずれましたが、一緒にいた時はいつもこうして芝居の話ばかりでした。

巳之助さんが「父は元気にしています。」と言ってくれた一言で安心しました。
寿(ひさし)さん(三津五郎さんの本名)舞台ご一緒出来る日を心待ちにしています。

哲明(のりあき)さん皆頑張っています。

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「「沼津」」

2013年11月 6日

11月国立劇場「伊賀越道中双六」が初日を向かえました。

大好きな演目で通し狂言「伊賀越道中双六」は鴈治郎家にとっても曽祖父・祖父が唐木政右衛門や十兵衛を代々演じてきた縁の深い演目です。
そして今月私の演じる"お米"は初役です。
と言っても初めてのような気がしないのはやはりこの演目に対する思い入れが強いからだと思います。

そして今回は父と兄の親子逆転という珍しい配役です。
久し振りの兄との共演ですが、兄の娘になるとは思ってもいませんでした。

"お米"は今は田舎で父娘の二人暮らしですが、以前は吉原で"瀬川"という名で勤めに出ていました。
娘の中にその過去を臭わせる部分をどのくらいどう出すかが1つの思案のしどろです。
あまり強く出すのも現在は武士を夫に持ちかたぎですので難しいところです。

十兵衛に初めて会ってうちに誘う時のお礼の言い方、手をついて「聞いてくださりませ」とお辞儀をする時に手の位置を真ん中から少しずらし微妙に色気を出す。台詞の抑揚や相手との距離感お礼の言い方等、充分男を知っている色気は必要なのだと思いますが、過度にならないことは大切だと思います。夫・志津馬(私の息子・虎之介が勤めています)を思い続けている事が最も大事でしょう。

印籠を見つけて十兵衛を追っかけて行く時父の平作に止められて言う台詞の中でで、歌舞伎では「股五郎のあり処を尋ね」という言葉を知っている範囲では皆さんおっしゃらないのですが、文楽では言っているので、私は今回は言うようにしています。
父娘2人で居る時はその名は口に出したほうがいいような気が致します。

十兵衛はいずれ必ず演りたい役ですので今回は代々受け継がれてきた父の十兵衛を吸い尽くすつもりで舞台にっています。

http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_l/2013/11121.html

是非劇場に足をお運び下さい。

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「メイクドラマ」

2013年11月 5日

11月3日はメイクドラマでした。
かつて長嶋茂雄監督が口にした言葉ですが、今回はジャイアンツが日本一を逃し、楽天ゴールデンイーグルスの日本一というドラマが待っていました。
3月11日と日にちが符合するおまけまで付いての星野楽天日本一。
おめでとう!!
物心ついた頃からのジャイアンツファンですが、負けて気持ちよかったのは初めて経験です。
星野監督が楽天の監督に就任される前に一度大阪でお会いしましたが、ジャイアンツファンの僕としては正直あまり会いたくない方だったのですが、お会いするととても素敵な方で、人は会ってみないとわからないなと反省をした思い出があります。
しかし、楽天ファンになったわけではありません。

今年も一年間ジャイアンツを応援し続けましたがこの日をもって今年の試合は終わりました。
優勝を逃したのに後味が悪くないのは、素晴らしい筋書きの無い最高のドラマを連日見たからだと思います。

舞台の話にからめて申し訳ないのですが、役者は次に何が起こるか、ドラマのあらすじをすべて知って舞台に立ちます。しかし次に何が起こるか判らず演じることがドラマをより面白くすることは間違いありません。
次に手を取られるとわかっていて自然に手を取られる前に出すようなことはリアリティに欠けドラマをつまらなくします。
だから今回の日本シリーズはハラハラ・ドキドキの連続で最高のドラマでした。
そして楽天の皆さんおめでとう。

ジャイアンツの皆さんお疲れ様でした。
今年もありがとう!!!

9月の休みの時にエキサイトシートで観戦した時の写真です。

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試合後、山口・坂本両選手と食事しましたが、お二人初めジャイアンツの皆さん原監督今年一年お疲れ様でした。

父の始球式で始まった今年のジャイアンツ。
日本一になって欲しかった!!!

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