中村扇雀の公式ブログ

「修禅寺物語・桂」

2012年1月 9日

今月の舞台が開いて一週間が経ちました。

年末の稽古が三日間で初日を迎えた「修禅寺物語」
桂の役は初役ですのでもう一日は稽古をしたかった気が致します。

岡本綺堂の歌舞伎には独特の世界観があり、平成の現代を生きるお客様にどれだけの共感を与えるかはわかりません。初春の歌舞伎演目にしては少し暗いイメージのある作品であることは否めないと思います。

夜叉王という面作り師の生き様を浮かび上がらせるために芯の強い気丈な娘と将軍頼家の悲運を絡めた作品ですが、史実に沿った作品ではありませんので、役を創造する上で自分の演じる(今回は桂)役を創り上げていかなくてはなりません。

芯の強い女性は私の中では多く演じている種類の役ですが、この桂は結局薄幸ですので、どこかに影があるのではないかと思っています。
父の夜叉王が頼家の面を何度作っても死人の相になってしまうと言っているように桂の顔にもその相が現れていたのかも知れません。

また、注意しなくてはいけないのが歌舞伎作品として上演しているので新劇のようになってはいけないということだと思います。歌舞伎の台詞の言い回しが大切になってくる作品ではないでしょうか。

そんなこんなを考えながら勤めています。

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撮影:松竹写真部

毎日の舞台の中からもまた新しい発見があるものです。

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コメント

修禅寺物語の身代わりになってキズを負う場面
つやっぽいです
嫉妬してしまうほどですね
素敵ですね うっとりしてしまいます

あけましておめでとうございます。
松竹座での舞台写真をたくさん掲載していただき、ありがとうございます。今月、大阪まで拝見に行けないのが本当に残念なのですが、「修禅寺物語」、私はとても魅かれるお芝居です。お正月の演目としては若干暗いイメージのある作品であることは否めないと思います一方で、現実や史実とは異なるこういう世界もあるなということがひしひしと伺え、その分、歌舞伎ならではの役者さんの個性が出やすいのではないか、とも感じます。桂を演じられる上での扇雀さんがお心持ち、とてもよく分かりました。ブログを読んで写真を拝見しているだけでも、楽しい気持ちにさせていただきました。千秋楽までがんばってください。

およよさん

桂は自分の運命を恨んではいないのでしょう。
断末魔の顔を父に見せますがもしかしたらふっと微笑んだかも知れませんね。

ゆうすけさん

おめでとうございます。
桂は一夜のうちに自分の運命が激変する人物でやりがいのある役です。
役者という職業は色々な人生を体験する不思議な職業です。
また舞台見にいらして下さい。

現実に満足しないプライドの高い桂の強い性格が
頼家の忠誠心から、自らの命を厭わない潔さが
後半になって、悲しく清々しささえ覚えます

ただ、強いだけでない桂に高貴な精神を感じました

たまねぎさん

桂を演じるにあたっては作品を何度も読み直し行間を埋めていきます。
言葉になるときの感情を探していきます。
作品に書いていない部分を探考えることが演じるときの難しさであり、楽しさでもあります。

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