中村扇雀の公式ブログ

「松竹座「汐汲」」

2011年5月19日

父の「汐汲」観てきました。

十数年前に巡業で一ヶ月踊った経験がありますが、父の汐汲は今回はじめて見ます。
勿論従来の振りは知っていますが、今回程びっくりしたことはありません。

私の知っている汐汲はそこにはありませんでした。
従来とは全く違うストーリー性の高い長唄「汐汲」となっていて、途中で兄が演じるところの此兵衛が登場してからは立ち回り主体となり一層芝居の要素が多くなり、最後は花道に引込み、その後を此兵衛が追っかけて幕となったのですが、あっけに取られていました。

幕が降りてに父の楽屋を訪ねますと、「こんな風にしちゃったんだよ。ハッハッハッ」と嬉しそに笑っていました。「ヒロもそのうちこれでやるといいよ。宋家(藤間)に頼んで全然違うようにしちゃったけど芝居ができなくちゃこうはいかないよ。」と言い切りました。つまり歌舞伎役者の舞踊は体を使うのは勿論、芝居の心も重要だと言いたかったと解釈しています。

古典と言われる演目でもこうしてみると新作のようになってしまうことを証明して見せてくれました。

義太夫狂言でも自分自身の新しい解釈や演出を探求する父ですので今更驚きはしませんが、かなり刺激されて松竹座をあとにしました。

ご覧になった方の感想を聞いてみたいと思っています。

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コメント

私も19日に[汐汲]、拝見しました。
この演目自体、観るのが初めてでしたが、
とてもヨカッタです☆
お父様とお兄様、ホントにお顔がよく似て
いらっしゃいますね(^・^)
お二人が並ばれた時は、思わず笑って
しまいました・・・。

昨年舞台でお世話になりました翔馬母です。今月松竹座で長兵衛の伜長松をさせていただいてます。19日は、出番ではありませんでしたが、いつも汐汲の音を聞きながらお顔をしていただいてます。今月も楽しく良いお役を出演させていただいてます。

普通はひとりで踊り小道具も三段傘と呼ばれる傘が三層になっている長いものを使っての振りが見せ場なのですが、その部分が全く無く、その上登場人物がひとり増えて、実はびっくり仰天でした。

翔馬君のママ

ありがとう!
翔馬君は素直でお芝居好きで大好きな子役さんです。
歌舞伎がやりたかったらいつでも相談してきてくださいね。

5月の初めに、「汐汲」を拝見しました。
生涯初めての「汐汲」だった故、従来の振り付けと大幅に違うことは、知る由もなかったのですが、先日、壱太郎様がテレビで舞われているのを拝見して、はあ、なるほど、と扇雀様の仰られたことを理解いたしました。
壱太郎様の振り付けが従来型なのでしょうか、3段傘も登場しました。
おいくつになられても、フレッシュな視点で、御研究なされる藤十郎丈の姿勢が素敵です!それに、汐汲では、重鎮に対し失礼かもしれませんが、藤十郎様はとってもかわいらしかったです。

みゅうさん

壱太郎の番組を見ていただいてありがとうございました。

僕見逃しちゃったんです。
でもそれで「汐汲」の違いを理解していただけてよかったと思います。

伝統は革新から生まれるという言葉がありますが、仰る通り父は人と同じよりオリジナリティーを追及するタイプですので見ていてとても刺激されます。

コクーン歌舞伎や平成中村座の海外公演、野田歌舞伎、工藤歌舞伎、渡辺歌舞伎(渡辺えり子さん当時)など色々な新しい試みの報告をしても、新しい才能は褒めますが自分はそんなことでは驚かないよ、という空気で軽く受け流します。
次の自分の勤める新しい工夫のほうが頭の中は一杯のようですが、実は自分も参加したいのかもしれませんね。

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