中村扇雀の公式ブログ

「観劇記」

2013年3月28日

先週はテアトル銀座・赤坂ACTシアター・国立劇場と歌舞伎を観て参りました。
20日にテアトル銀座と赤坂ACTシアター。23日に国立劇場に行って参りました。

まずテアトル銀座は海老蔵さんの「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」
この作品には何度出たでしょう。
一寸徳兵衛(意外にも演っているんです。兄翫雀の団七で)・お梶・お辰・琴浦と勤めパンフレットの上演記録を見ましたら国内で12回海外ではニューョーク・ベルリン等で出演していますので300回以上はこの作品に出演していることになります。

今回はご承知のように團十郎兄さんの「マクベス」を上演予定でしたが、急遽の演目に変更になったものです。
客席はほぼ埋まり盛況の幕開きです。この劇場はうなぎの寝床のように縦長ですので、歌舞伎に適しているかは賛否の別れるところでしょう。
この劇場にはかつて一度だけ出ています。
1988年3月まだ名前が銀座セゾン劇場と行った頃に「きらら浮世伝」という作品に"山東京伝・伝蔵"というやくで出演しました。作:横内謙介 演出:河合義隆
勘九郎時代の亡くなった勘三郎さん主演で歌舞伎役者はお兄さんと私だけでした。
この話は長くなるので後日改めての機会に致します。

海老蔵さんはこの役を勘三郎の兄貴に習っていますが、やはり難役のようです。勘三郎のお兄さんはこの役を初役で演じる時に一番注意をしていたのが大阪弁でした。この作品の全体を通す空気感は浪花(なには)の空気なのですが、それを表現するにはまず言葉と考えたのだと思います。それに義太夫狂言ですから当然原作の言語は大阪弁になってきます。
出演の役者さんはほぼ全員関東生まれの関東育ちですのでそこからまず難関です。
役の性根という言葉がありますが、その人の日常ですとか、生活信条ですとか、時代背景や登場する地域の環境ですとか、すべてが役作りに関わってきます。
そして歌舞伎の古典は基本的に演出家は主演の役者さんということになってきますので、差の役者さんの持っている知識や経験が大事になってきます。終演後に海老蔵さんの楽屋を訪ねると 「難しいですね」の一言が聞けたので、嬉しく感じました。難しいんです。だから努力して次を目指す心が生まれてくるのではないでしょうか。
彼は仁(にん)はこの役にピッタリですから、回数を重ねていくことによって役が体に染みこんでくるのだと思います。特に大阪弁の捨て台詞。すなわち台本にない言葉等は本当に難しいんです。
義平次役の市川新蔵さんが初役と聞き驚きました。初めてと思えぬほどの義平次で空気感が好きでした。

続いて赤坂ACTシアターへ足を運び、劇場をはしごです。
雅行(勘九郎)・隆行(七之助)・幹(獅童)そして二郎(亀蔵)ちゃんと馴染みのメンバーで自分がそこに出演していないのが不思議なくらいです。
「怪談乳房榎(かいだんちぶさのえのき)」
この作品は出演したことがありませんが、何度となく見ている作品てす。
千穐楽まで札止めの満員で追加公演も決まり哲明(ノリアキ)さん(勘三郎さんの本名)も喜んでいると思います。
いや、悔しがっていることでしょう。
舞台の出来は稽古の最初から哲明さんがついていたかのような出来で、安心してみて居られました。捨て台詞では見に来た僕をいじる余裕もあり早変わりの手際もよく、周りの人達がかつて哲明さんで何度も経験しているので何もかも飲み込んでいるのだと思います。
全体を通しテンポよくお客様の反応も素晴らしく舞台に一緒に立ちたくてウズウズしてしまいましたが、観劇後の楽屋は出演していない者の気まずさというか、チームに入っていない寂しさみたいなものが見上げてくるので、一言お疲れ様を言って早々に退散いたしました。

23日は福助さん主演の「隅田川花御所染」(すみだがわはなのごしよぞめ)
これは南北の作品で大作です。劇中を約3時間半にまとめていますが、南北独特の入り組んだ人間関係を紐解きながら芝居が進行していきます。
六代目歌右衛門の叔父様が復活した作品で叔父様を敬愛している福助さんにはぴったりの作品です。女の業を善人悪人取り混ぜて、大喜利(最後の場)の所作(舞踊劇)迄一気に突き進みますが全く飽きさせずに運んでいくのはさすがに福助さんの力だと思います。
国立劇場はこうした作品を取り上げることに成功しているので、今後機会があれば、父が近松座て取り上げてきた作品等を手掛けていきたいなと思っています。

歌舞伎座開場を目前にして3箇所三様の舞台で歌舞伎に触れお客様の視点で感じたことを次の自分の舞台に生かして行きたいと感じた観劇でした。

歌舞伎はやはり幅の広い奥の深い演劇なんです。それが伝統なのでしょう。
テアトル銀座パンフレット.jpg
赤坂歌舞伎パンフレット.jpg
国立'13.3.jpg

この他にも博多座で歌舞伎公演があり多くの方に歌舞伎に触れていただけることは励みになります。


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