中村扇雀の公式ブログ

「7月の舞台から」

2013年8月29日

随分ピントのずれたというか過去の公演の事ですいません。
やっと休みになりゆっくり思い出しつつ書いていこうと思います。

7月の大阪松竹座での「柳澤騒動」は勘三郎のお兄さんも演りたがっていた演目の1つで昭和45年の作品です。
橋之助さんがその作品で初舞台を踏んでしますが、彼が是非上演してみたいと切望していた作品です。私は初演の時に猿之助時代の現猿翁のお兄さんが、そして再演の折には天王寺屋(富十郎)のお兄さんが演じた護持院隆光の役を勤めました。
役を頂いた時にはいささか驚きましたが、プロデューサーが私で良しとしたのですから挑戦するしかないなと決めて役作りに入りました。
過去に2度しか上演機会のない宇野信夫先生の昭和の作品です。
初演の映像があったのですが、役作りの上で先入観になってしまうので初日があくまでは見ないようにと思いました。
とにかく繰り返し台本を読むことから始まりますが初演の台本通り演ると時間がかなりかかるので今回はいくつかカットされた部分がありますが、まず初演時の台本を繰り返し読むことに致しました。正直な感想を言いますと、最初に読んだ時には映像があまり浮かんで来ないのと、柳澤吉保のエゴだけの芝居に感じ面白いのかなという不安がありました。
しかし、2回目以降はそれぞれの役の視点から読み進むに連れそれぞれの人物の気持ちの変化が見えてきて深く掘り下げていくと面白い作品と感じるようになってきて映像として自分の隆光の役が浮かび上がってきました。
芝居が終わっているので種明かししますが、吉保と実は裏で手を結んでいたことを吐露する場面がそこに至るまでの場面で、少しづつ見せていました。一瞬吉保を見て微笑んでいたり本当に吉保の権力欲や策略に驚嘆する瞬間を見せたり、再見のお客様にギリギリわかるぐらいの表現をしていました。それを演ることで隆光が上手く作れていつたような気が致します。
最後に殺される時の立回りだけは映像を見たのですが、この時にかつて渡辺えり(当時は渡辺えり子)さんの新作歌舞伎で蚊の役を演じた時に真後ろに倒れて死んだのを思い出し、その時のマットレスを歌舞伎座から運んでもらい池の中に仰向けに倒れて死ぬ演出を考えました。
橋之助さんの吉保がまさに適役で是非再演できたらなと願っています。

ご覧になっていない方の為に舞台写真を幾つか掲載致します。
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もう一つの演目「杜若艶色紫」は新橋演舞場で過去に上演致しましたがその時私は今回兄の翫雀が演じた"佐野次郎左衛門"を演じていましたが今回はその時福助さんの演じた"八ツ橋"での出演となりました。
恋人の為に愛想尽かしをしてその相手に殺されるはかない役です。
これも立回りに一工夫加えて最後は海老反りで息絶えるように致しました。
殺される相手が恋人ですので納得がいかないのとしょうがない自分の運命がと諦める両方の感情を込めながらの最期を表現することに神経を集中させていました。

P7120239.jpg

P7120241.jpgのサムネール画像


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コメント

護持院隆光の最期は、やはり扇雀さんがお考えになったのですね。
あそこもヤラレたのです。
柳の枝を握り(柳澤の象徴に見えました)、そして、「碇知盛」のように、仰向けに落ちて死んでいく姿は、
護持院隆光のそれまでの思いと、すべてが潰えたという心が、
あの瞬間に見事に表されていました。
ああ、たまらない! 一瞬の中に、こめられたものを見事に魅せてしまう扇雀さん!

9月に入ってもまだまだ暑い日が続いておりますので、どうぞお体には気を付けてくださいね。

私もさかのぼってコメントさせていただきます。
7月の松竹座、本当に素晴らしかったです。

一部の扇雀さんは内に秘めた演技が強く表現され、「実際に何か扇雀さんの身に起こっているのではと思ってしまったほどです。^_^;」

八ッ橋も超ステキでした。

船乗り込みで我當さんが3組の兄弟共演できることが感慨深いとおっしゃっていましたが、
観客の私たちも何か心にくるものがありました。
素晴らしい舞台を見せていただきありがとうございました。

もう一ヶ月以上前なんですね。八ツ橋の生き絶える場面は、切なくて悲しい気持ちになりました。
隆光が仰向けに倒れる場面は、本当にびっくりしました。
どちらもまた再演してほしいです。


護持院隆光ものすごくかっこよかったです!
高2の娘は扇雀さんの女形が絶対観たいというので夜の部も拝見しました。
八ツ橋もっと出てて欲しかったです。物語がそうだからしょうがないですが(^^;)
隆光の最期、3階横から観ていたので倒れた最後まで堪能させていただきました♪
扇雀さんの立役大好きです。
「柳影澤蛍火」ものすごくおもしろかったです。大河ドラマっぽい華やかな感じもあり、ストーリーがとても追いやすかったです。また観たいと思いました。
すばらしいお芝居をありがとうございました。

いつも素敵な写真と裏話をありがとうございます。
こうしてブログを拝見していると、観劇の感動が
改めて蘇ってきます。
隆光の迫力の最期には、思わず息をのんでしまいました。
是非是非再演を楽しみにしています。

じゅんこさん

柳の枝をつかむ演出は先代猿之助さんが初演の折になさったことを踏襲しました。感じて下さったとおり隆光のそれまでの生き方を思い出してもらえれる最期にしたかったので、狂言方の堀本さんが枝を折る効果音を考えてくれたのですが、あまりにリアルで場面にそぐわない気がしましたのでそれは辞めました。

くらりさん

観劇ありがとうございました。双方共初役でしたが自分なりに役に近づけたかなと思っていたので嬉しいです。

梅☆さん

柳澤騒動はメンバーが揃えば是非再演したいですね。

ひかりさん

観劇ありがとうございました。八つ橋は確かに物語がそうなのであとは幽霊になって出るくらいですね(笑)柳澤騒動のような通し狂言は筋をしっかり追う楽しさがあるので上演機会が増えるといいなと私も思っています。

chizuさん

隆光は予想以上の成果が出たような気がしているので私自身も是非再演したいなと思っています。

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