中村扇雀の公式ブログ

「「竹の間」の政岡」

2014年11月12日

初役の「竹の間」の政岡もだいぶ体に染みこんできたように思います。
稽古の段階で69分かかっていた時間が65分程になりました。義太夫の入っていない場ですのでテンポアップを共演の皆様にお願いしました。その時に一番私が大事にしていることは、台詞の言葉一つ一つを粒立てることです。義太夫の語りに近いものを心がけるようにしています。そして言葉じりに息を抜かずしめることも大切にしています。住大夫のお師匠さんが「尻窄みになったらあかん」とよく仰っていらっしゃしました。そうなることでお客様に言葉がよく伝わるのではないでしょうか。そして時間短縮も芝居には欠かせません。かと言って気持ちが入らずぞんざいになってもいけないので難しいところです。

さて、この場の政岡は鶴千代を守る一心で受けの芝居が殆です。
やっていると大統領を守るSPってこんな気持かな等と思ったりもしています。
周囲に気を配り常に身を張ってでも主君をお守りする心を忘れません。
ただ、乳母という役柄上母性がそれにもまして必要です。
幕開きから八汐達の登場迄の数分間で鶴千代様と息子の千松と政岡の日常の雰囲気が出せたらなと思っています。御殿の限られた中で窮屈に暮らしている若君を和ませるのも乳母の役目でしょう。

八汐の登場から今回気づいたのが、八汐が敵であることにいつ気づくかということです。
次の御殿の場面で我が子の千松を殺すことは勿論この時点ではわからないわけですし、けれども若君の暗殺を狙う動きがあることも察しているので油断はなりません。
敵役として登場する八汐ですからお客様には善対悪の構図がはっきりしていたほうが楽しめると思いますが、最初から完全に敵だと思っていてはいけないということです。
徐々にわかってきてこの場の引込みの時に怪しいと確信します。

御殿の場で今回カットになった小槇の登場があり夫を殺され自分も加担したことを白状してすべての悪事が露天します。
竹の間からの通し上演の際はこの小槇は再び登場させたほうがお客様にのわかりやすいと思いますので次回は是非にと思います。

今回はこの後父の政岡にバトンタッチします。
お客様にどのように見えているかは判りませんが舞台袖で父の政岡を観てその空気を自分の中に染み込ませて舞台にたつようにしています。
男まさりの烈女鏡と御殿の場で語られる女性ですから竹の間でも片鱗を見せなくてはいけないのでしょう。

舞台写真です。

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25日まで上演いたしておりますので国立劇場でお待ちしています。

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コメント

ブログ更新ありがとうございます。お写真のせて頂く事で舞台の緊張感が伝わってきます。「政岡」の守りたいという強い思いに女性の本質的な愛情の形が見えて、この時代も意思の強いたくましい女性がいたんだなぁと考えさせられました。25日まで、どうぞお身体大切になさって下さいませ。
南座の顔見世楽しみにしております。

ゆかりさん

ありがとうございます。南座初日もあと10日に迫ってきました。今年を締めくくる公演楽しみにしています。

扇雀さんの「政岡」を拝観しました。
ずっと夢見ていたことが叶ってしあわせです。
扇雀さんの政岡は絶対に素晴らしいと想像してはおりましたが、
私のようなしろうとの想像を遥かに超えた素晴らしさでした。

扇雀さんの政岡は、体中の神経を四方八方に張り巡らしていました。
けれど、ピリピリした感じをあからさまにするのではなく、まさに「忍」の佇まい。
鶴千代君や千松のあどけなさを見ている優しいまなざしのときにも、
背中には目があるような凄さがありました。
その中に、我が子千松への愛情を、けして過剰にではなく、まるで焚き染めた香が香ってくるように感じられました。
それを感じたからこそ、次の場面が今まで以上に辛かったです。
「竹の間」で、扇雀さんは、政岡を創りあげ、「御殿の場」をグッと深いものになさったと感じました。
それは、「通しだからわかりやすい」とかではなく、
扇雀さんの政岡があったから、次の悲劇が、政岡が顔色も変えず、我が子が殺されるのを見ている場が、
よりいっそう胸に迫りました。
私には「扇雀政岡」とか「藤十郎政岡」には見えませんでした。
扇雀さんが一人の政岡を創ってくださったから。

御膳を持ってスッと立つ政岡の姿。
ああ! これが観たかった!
泣きそうでしたけれど、泣いたら見えなくなるので必死にこらえました。(笑)

「小槇の登場を次回は是非・・・」というお言葉に、
次がまたあるのだ!と、また扇雀さんの政岡が観られるのだと、本当に嬉しくなりました。

ありがとうございます。
夢って叶うって、扇雀さんが叶えてくださいました。

じゅんこさん

ありがとうございます。勿論いずれは御殿の政岡を演らしていただきたいと願っています。
舞台は自分の持っている物すべてがでますしまた出さなくてはいけないと思います。以前ご紹介した。世阿彌のことば100選という本の中にも「年々去来とは、幼かりし・・・・ 」の一節にあるとおりだと思います。御殿の政岡を演じるまでに財産を貯めたいと思っています。

このたび夫婦揃って生まれて初めての歌舞伎鑑賞。まっさらで拝見し、まずは感じて知識はそれからということで、11月8日小雨の国立劇場へ伺いました。そして... 夫婦で心の底から楽しませていただきました。歌舞伎って面白いですね!二人とも扇雀さんに魅了されてしまいました。立ち振る舞い、お声もまなざしもすばらしかったです。凛として美しい「政岡」から目が離せない「竹の間」で、お父さまの「御殿」へ流れ込むものをしっかりお作りになっていたと感じました。扇雀さんが「御殿」を演じられるときは必ず夫婦でまた拝見したいねと九州へ戻る機内で話しました。幸せな時間をいただきました。

楽しみにしておりました国立劇場の舞台、拝見しました。

義太夫の入っていない場のためテンポアップをされたとのことで、台詞の遣り取りに緊張感を持って拝見しました。

「御殿」をお務めになる日も、楽しみにしております。

圭子さん

歌舞伎の魅力に触れて頂いてありがとうございます。来年の6月は博多座に出演致します。是非また劇場にお運び下さい。お待ちしています。

やすしさん

ご観劇ありがとうございます。「竹の間」の経験は後々生きとくると思っております。 「御殿」楽しみにしていて下さい。

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